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研究・活動報告

2024/6/25

「医学生理学研究所の林泰秀客員教授は小児疾患のマーカー解析を行い、 Blood Advances誌に原著論文を発表しました。」

医学生理学研究所の林泰秀客員教授は群馬大学と共同研究を行い、小児疾患、一過性骨髄異常増殖症(TAM)の早期発見のためのバイオマーカーを見出して欧文論文を発表しました。

説明文
一過性骨髄異常増殖症(TAM)はダウン症(DS)の新生児の約10%に発症し、多くは自然治癒をする一方で、およそ20%の症例は早期死亡に至る。そのため、早期死亡を予測し、治療介入を決定するための新たなバイオマーカーが必要である。林泰秀医学生理学研究所客員教授と群馬大学は共同でTAM患者における臨床的特徴とサイトカインレベルとの解析を行い、サイトカイン解析の臨床的意義を明らかにして論文発表した。日本小児白血病・リンパ腫研究グループが実施したTAM-10臨床研究に登録されたTAMのDS患者128例に対して27種類のサイトカイン解析を行った。そのうち5つのサイトカイン値[インターロイキン(IL)-1b、IL-1ra、IL-6、IL-8、およびIL-13]は、早期死亡の患者で非早期死亡の患者よりも有意に高かった。また、128例に対して教師なしコンセンサスクラスタリングを行うと、患者は3つのサイトカイン群hot-1、hot-2、coldに分類され、早期死亡のCIRはサイトカイン群間で有意差があった(P=0.013、図1)。これらの結果は、サイトカインレベルの測定がTAM患者の早期死亡の予測に有用であり、治療的介入の必要性を判断するのに役立つことを示唆する貴重な情報を提供するものである。
Yamato G, Tsumura Y, Muramatsu H, Shimada A, Imaizumi T, Tsukagoshi H, Kaburagi T, Shiba N, Yamada Y, Deguchi T, Kawai T, Terui K, Ito E, Watanabe K, Hayashi Y. Cytokine profiling in 128 patients with transient abnormal myelopoiesis: a report from the JPLSG TAM-10 trial. Blood Adv. 2024 Jun 25;8(12):3120-3129. doi: 10.1182/bloodadvances.2023011628. PMID: 38691583.

図1.TAM患者128例のバイアスなしコンセンサスクラスタリングとその予後
TAM患者128例はサイトカイン値によって3つのサイトカイン群(hot-1、hot-2、cold)に分類され、hot1/2群はcold群に比較して有意に早期死亡率が高かった。